花べっぷを支える人々

  • vol.5 後藤英明さん(後藤緋扇貝)

    投稿日:

    大分県の最南端、佐伯(さいき)市蒲江 (かまえ)は、豊後水道に面し、豊かな海に恵まれた漁業。港の先に見えているのが「屋形島」。穏やかな海中にはサンゴ礁が広がり、ダイビングスポットとしても知られている。

    そんな美しい海で育った緋扇(ひおうぎ)貝は、素材の旨味そのままに温泉で蒸しあげられる、「別府湯けむり蒸し」として花べっぷで提供されている。

     

     

    漁港に迎えに来てくれたのは、後藤 猛(たけし)さん。父親である文明さんが始めた緋扇貝の養殖業を共に営んでいる。気持ちの良い海風を受けながら島へと向う。養殖場では網に吊るされた緋扇貝が、静かに沈んでいた。

    出荷されるまで1年程かけて成長するという緋扇貝。「これがまだ小さいわ」と、見せてもらった貝は、小さくて色とりどりで、まるで宝物のよう。紫色は珍しいそうで、全体で見ると10%程なのだとか。

     

     

    定期的に貝の表面に付く付着物を落とし、海に戻す。丁寧にその作業を繰り返し、ある程度の大きさになると、沖に移動させる。 貝のエサとなるプランクトンが豊富なため、屋形島の緋扇貝は特別大きいのだという。「そのままでいいか?」文明さんが慣れた手付きで、貝を開いて身を取り出す。ぷりっとした歯触りで、程良く引き締まった肉厚な身に旨味が詰まっていた。「ヒモもいってみるか?これも生で食べれるんよ。塩水でさっと洗うてな」新鮮なヒモは、コリコリとしていて貝特有の甘みがたっぷり。

     

     

    「海の見えないところに住むなんて、もう考えられんな」と、文明さん。一時期大分市内で働いていたという猛さんも、島へ戻ってきた。屋形島の海を眺めて育った思い出は、大人になっても心のどこかに焼き付いて離れないのかもしれない。船に戻る途中、養殖場を覗き込むと、どこからか迷い込んで来たというウミガメが泳いでいた。