花べっぷを支える人々

  • vol.4 三見(さんみ) 守さん(三味ざぼん)

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    午前3時。夜が明ける前から厨房には明かりが灯り、鮮やかな黄色のざぼんが蜜の中でぐつぐつと音を立てる。柑橘の香りが満ちる中、丁寧に炊き上げられたざぼんは、花べっぷのお部屋でお茶うけとして提供され、旅の疲れを癒してくれている。

     

     

    「三味ざぼん店」の店主、三見守さんは元々はサラリーマン。お父さんの代から60余年続くお店を継いで、まだ3年程だという。「母親からは、店を継がずに安定したサラリーマンになりなさい、と言われてたんよ。だから、継ごうという気持ちは昔はなかった。けれど、定年を前にして今後の事を考えたときに、せっかく両親が残してくれたお店があるのだから、夫婦2人で継いで行けたらなと思ったんよ」

     

     

    継ごうと決めたときから、守さんの修行は始まった。父親の店で働いていた職人さんに朝早くから技術を習い、6時半に会社に出勤する生活が続いた。「私の原点は生まれ育ったやよい商店街にあるけん、ここの通りの灯火は消したくない。あと、ざぼん漬けを守り続けたいという気持ち。いや、守らなきゃという使命かな」

     

     

    守さんの想いが込められ、店頭に並べられたざぼん漬けは、キラキラとしていてまるで宝石のよう。「白雪」「べっ甲」「琥珀」という麗しい名前を付けたのは、守さんなのだとか。「創業以来継ぎ足しの蜜で炊き上げている『琥珀』は、色が1番濃いから『黒』って呼んでたりしたなぁ。でもせっかくだから、もっと良い名前を付けたかった。今は名前負けしないように、気合いが入るわ」と、笑う。

     

    宝石のようにカットされた1粒を口に運ぶと、滑らかな食感と、懐かしい甘さが口に広がり、ほっとする。「美味しいでしょう。 私も、美味しいと思う」と守さんは笑顔を見せた。