花べっぷを支える人々

  • vol.15 安藤康男さん (別府つげ工芸) 

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    別府市街地の南の端に位置する海にほど近い浜脇地区は、その昔、浜から温泉が湧き出る様子から「浜脇」と名付けられたとされている。明治・大正時代、別府を訪れる観光客は浜脇を目当てにやって来たといわれるほど、栄えた場所だった。

     

     

    当時、豪華な映画館や芝居小屋が立ち並んでいたという松原公園側の、人目を引くモダンな建物が大正8年創業の「別府つげ工芸」。初代からの伝統技術がしっかりと受け継がれており、置物、装飾品、日用品など様々な形のつげ製品を作ることが出来るつげ細工屋は、今では珍しいのだとか。

     

     

    現在の建物は1年程前に改装したもの。改装時、今まで見たことがなかった昔のものが次々と出てきたのだそう。金魚、船、龍…おそらく当時流行ったのであろう帯留めの図案が刻印された、大量のハンコもその1つ。これは、つげに下書きの線をつけるためのものなのだとか。「この図案を考えた祖父は、とにかくきっちり絵を描く人でね。船の絵を描いてほしいとせがんだら、物凄く立派な船を波しぶきつきで描いてくれた。まだ小さかったから、こんなのいやだ!って言っちゃったんだけどね」と、懐かしむように笑う3代目の康男さん。

     

     

    「大切なことは、つげが教えてくれる。いつも心穏やかに物づくりに向き合うことが大切。心が乱れていると、必ず跳ね返ってくる」それが、先代から学んできたことなのだという。職人の代は替わり、時代に合わせて商品も変わってゆく。けれど、大切なことはいつまでも変わらない。つげは作り手の思いをのせて旅立ち、誰かの手元で時を超えて息づいてゆくのだろう。

    使い込むほど風合いを増し、手入れをするこで自分に馴染むものになるつげ製品。手に取れば、なめらかな肌触りと繊細な彫刻の魅力が伝わるはず。