花べっぷを支える人々

  • vol.20 清末 浩一さん (餅屋清末 杵や) 

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    大分県北部、国東半島に位置する豊後高田市には、「昭和の町」と呼ばれる商店街がある。その中に店舗を構える餅屋「杵や」。

     

    現在2代目の浩一さんは、元々は東京で働く銀行マン。大学時代から12年暮らした都会から地元へ戻ったきっかけは、自身の子育てだったという。「小さい頃、国東半島の大自然の中で遊んだ幸せな記憶が、今の自分の強みになっている。自分の子どもにも、同じ経験をさせてあげたかったんです」と振り返る。戻った当初、考えていた仕事は保険屋か不動産屋。両親が経営していた餅屋は、当時卸のみを行っており、継ごうとは思っていなかった。

     

     

    昔は栄えていたが、狸が通るようなさびれた風景に変わっていたという商店街。2001年に昭和をテーマとしたまちづくり事業が始まり、商工会議所の青年部で活動していた清末さんにも「店を出してみないか」という誘いがあった。「2つ返事で受けたものの、関わる人たちと熱い意見を交わすうちに、これは生半可な気持ちでは出来ないなと気が引き締まりました」と振り返る。餅だけでは駄目だと思い、熊本の菓子屋に修行に行った。「反対されると思ったので、家族には出店の話をしなかったんです。9月オープン予定だったんですが、8月に父親がどこからか聞いてきて、やっぱり大反対されました」と笑う。

     

     

    「何もやらずにこのままだったら、町は無くなる」その想いで走り続け、迎えたオープン前日。建物は出来ていたが、肝心の商品がまだ出来ていなかった。徹夜で仕込みをし、当日の朝大慌てで店に向かうと、目に飛び込んで来たのは応援してくれていた地域の大人や仲間たちが掃除や開店準備をしている姿だった。店の看板や店内のポスター等も、知人がプレゼントしてくれた。「この想いは裏切れないなと思いました」

     

     

    もち米や水、小豆など、材料に徹底的にこだわった和菓子たち。花べっぷでは、大分のかぼすを使った餡がたっぷり詰まった、蒸したてのお饅頭が提供されている。「大分には、良いものがたくさんあるんですよ。それを伝えていきたいんです」と、微笑む清末さん。口に運ぶと、ほっとする味わいが身体に広がった。

     

  • vol.19 常川 真由美さん (うすきほのあかり工房)

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    綺麗に晴れ渡った青空の下、花べっぷ近くの別府公園で行われていたイベント「アースデイおおいた2013」は多くの人で賑わっていた。それぞれこだわりのある出店者のなかで、常川さんが出店していたのはキャンドルと香りのお店。

     

     

    高知県出身の常川さんは、故郷で会社員として勤めた後、青年海外協力隊としてタイで4年程活動していたのだという。「その経験がきっかけで、何か平和に繋がる仕事がしたいと思っていたんです」ちょうどその頃、知人であった現会長の松山さんがキャンドルの会社を立ち上げるということで、一緒に活動することになったという。「灯りは人の心に温もりを与えてくれるので、何か社会貢献に繋がるのではないかと思って」

     

     

    ほのあかり工房で開発されたキャンドルは、炎の中に安定した空気を取り入れるという特殊な技術が使われており、通常のキャンドルの5倍程の明るさを放つが、目に優しい光でリラックス出来る。屋外などでも消えにくく煙が出づらい、環境に優しい設計となっている。「今の世の中は電気や便利なものが多いので、伝えていくのは難しいです。でも少しずつ、少しずつ、キャンドルの良さを伝えていきたいですね」卓上照明や、卓上コンロなど、キャンドルの良さを活用した新しい商品開発も取り組んでいる。「もう、科学の世界ですね」と笑う、常川さん。

     

     

    香りから灯りに繋げていきたいという想いから開発された、大分名産のかぼすオイルと、椿オイル。「一般的に、椿はあまり香りがしないイメージがありますが、椿の品種はとても多く、なかには『香り椿』と呼ばれる香りを楽しめる品種があるんです」専門家のアドバイスの元、香り椿の香りを再現させたアロマオイルは、バラを柔らかくしたような少し甘めの香り。

     

    「生活の中に香りを取り入れて、豊かな時間を楽しんでもらえたら嬉しいですね」と微笑む常川さん。夜寝る前のリラックスタイム、キャンドルにオイルを少し垂らして、香りと灯りをゆっくりと楽しむ時間。忙しい毎日の中、そんな時間が心を少し豊かにしてくれるのかもしれない。

     

     

  • vol.18 西藤 陽介さん (花あかり)

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    たくさんの植物を抱えて花べっぷにやってくる、笑顔の素敵な西藤さん。生け替えを行うこの日、選んだのはアヤメ、ハラン、ナンテン…どれも初夏を感じさせる、爽やかな植物。ひとつひとつ手に取り、全体を見ながら手際良く生けていく。辺りに漂う静寂感と、ほんの少しの緊張感に、見ているこちらも背筋が伸びるよう。「花べっぷでは、館内の雰囲気に合わせて『日本文化』を感じてもらえるように花や枝を選んでいます。色の組み合わせや、形のバランスなど、考えることはたくさんあります」

     

     

    花の世界に身を置いて、10年。「手に職を付けたかったんです。介護士になろうと思って勉強していたんですけど、試験に落ちてしまって。その時偶然花屋の求人に目が留まったことが、きっかけですね」。就職したのは、葬儀専門の花屋だったという。「花屋といえば、かわいらしい花を扱って花束にするイメージがあったんですが、想像と全然違いましたね。不器用だったし、厳しい世界で大変だったけれど、初めて任せてもらえたときは嬉しかったです。その人にとって、一生に一度。人生の最後を飾る花だから」と振り返る。

     

     

    数年勤め、別の花屋に転職した。「花束や生け花など、花の扱い方は目的によって変わります。技術の幅を広げたかったので、色々な花屋で修行しようと思いました」。経験も積み、独立したいが1人で開業するには不安がある。どうしようか悩んでいたところに、代表が同級生だったことが縁で、現在勤める「花あかり」で働くようになった。今までの経験を活かし、葬儀花からホテル・旅館を彩る生け花まで、全般を担当しているという。「昔は、花はお金を持っている人しか買えない贅沢品、というイメージを持っていたけれど、本当はもっと身近なもの。野に咲く花を1輪テーブルに飾るだけで、空間の雰囲気が変わって気持ちも豊かになる。そういうところが、花の魅力だと思います」と笑う。

     

     

    日常から、非日常へ。見るだけで旅気分へ切り替えてくれる花べっぷ玄関の生け花は、今日も優しく旅人を迎えている。